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東京地方裁判所 平成9年(ワ)23955号 判決 1998年8月28日

原告

宮川俊彦

ほか二名

被告

長田義雄

主文

一  被告は、原告宮川俊彦に対し、金一八六万六九六六円及びこれに対する平成九年一二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告宮川紀子に対し、金五一万五三四三円及びこれに対する平成九年一二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告有限会社クレージーウェア・ジャパンに対し、金一九万円及びこれに対する平成九年一二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、原告宮川俊彦に生じた費用の三分の一及び被告に生じた費用の九分の一を原告宮川俊彦の負担とし、原告宮川紀子に生じた費用の三分の一及び被告に生じた費用の九分の一を原告宮川紀子の負担とし、原告有限会社クレージーウェア・ジャパンに生じた費用の五分の三及び被告に生じた費用の一五分の三を原告有限会社クレージーウェア・ジャパンの負担とし、原告宮川俊彦に生じた費用の三分の二、原告宮川紀子に生じた費用の三分の二、原告有限会社クレージーウェア・ジャパンに生じた費用の五分の二及び被告に生じた費用の四五分の二六を被告の負担とする。

六  この判決は、第一項ないし第三項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告宮川俊彦(以下、「原告俊彦」という。)に対し、金三一〇万三六二三円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成九年一二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告宮川紀子(以下、「原告紀子」という。)に対し、金七八万六七二六円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成九年一二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告は、原告有限会社クレージーウェア・ジャパン(以下、「原告会社」という。)に対し、金五五万三三〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成九年一二月六日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、以下に述べる交通事故につき、原告俊彦及び原告紀子は自動車損害賠償保障法三条に基づき、原告会社は民法七〇九条に基づき、それぞれ損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実及び証拠上明らかな事実

1  交通事故(以下、「本件事故」という。)の発生

(一) 日時 平成九年三月一六日午後一一時

(二) 場所 小田原市早川三丁目一八番一号先路上(以下、「本件事故現場」という。)

(三) 加害者 普通乗用自動車(相模三四す三九二九、以下「加害車両」という。)運転していた被告

(四) 被害者 普通乗用自動車(練馬三三る八九三八、メルセデス・ベンツE三二〇、原告会社所有、以下、「被害車両」という。)を運転していた原告紀子及び右車両に同乗していた原告俊彦

(五) 態様 本件事故現場の交差点手前で、赤信号に従って停止していた被害車両に加害車両が追突した。

2  責任

被告は、加害車両を保有し自己のために運行に供しており、本件事故当時、加害車両を運転し、前方不注視により被害車両に追突した。

3  傷害結果

原告俊彦

原告俊彦は、頸椎捻挫、腰部挫傷により、通院一三五日(実通院日数八〇日)を要する傷害を負った。

原告紀子

原告紀子は、頸椎捻挫、腰部挫傷、肘挫傷、左手挫傷により、通院一〇五日(実通院日数三八日)を要する傷害を負った。

4  被害車両に関する損害

被害車両は、衝突の結果修理を要する状態となり、その修理代金は金一六六万三九二四円、代車費用として三三万〇七五〇円を要した。

上記の修理代金及び代車費用については、原告会社と被告との間で示談が成立し、既に賠償金が支払われている。

二  争点

本件の争点は、原告らの主張する損害の有無及び額、特に、原告俊彦及び原告紀子の休業損害並びに原告会社の被害車両に関する評価損である。

第三当裁判所の判断

原告らの主張する損害について、以下において当事者らの主張を必要な範囲で示しつつ検討することとする。なお、結論を明示するために、各損害ごとに裁判所の認定額を冒頭に記載し、併せて括弧内に原告の請求額を記載する。

一  原告俊彦について

1  治療費等 金三七万四九八〇円(原告俊彦の請求どおり)

弁論の全趣旨による(被告もこの点をことさら争っていない。)

2  休業損害 金一六五万六九八六円(金二七六万一六四三円)

原告俊彦は、訴外株式会社中野ヘルスクラブ及び原告会社から年間一二六〇万円の報酬を受けていたとして、実通院日数の八〇日分の休業損害が生じたとしてその分の賠償を求めている。

これに対し、被告は、休業損害が生じていないか、生じていたとしても原告俊彦が前記会社二社の株主であることから、株主に対する配当的な部分が損するので、損害賠償の対象となるのは労働対価部分に限定されると主張している。

原告俊彦が、平成八年に年間合計一二六〇万円の役員報酬を得ていたこと(甲第七号証の一)、本件事故の傷害の治療のため実通院日数八〇日を要したこと(甲第五号証)は認められるが、一方、原告俊彦は、前記二社の株主であり代表者でもある(甲第一四、第一五号証)から、原告俊彦の報酬には、株主に対する配当的な部分が含まれているものと推認される。

前記二社の資本規模、従業員数、売上高、事業内容等(甲第一四、第一五、第二二号証等)を総合すれば、前記二社は小規模会社であり、原告俊彦自ら営業活動等をしていたことが窺われるから、原告俊彦の報酬中六割が労務提供の対価部分であったと認めるのが相当である。

したがって、実際に通院した日は原告俊彦が労務の提供ができなかったものと考えられるから、原告俊彦の休業損害は、同原告の請求する金額に六割を乗じたものであり、金一六五万六九八六円となる。

3  慰謝料 金八八万五〇〇〇円(原告俊彦の請求どおり)

原告俊彦は、前記の傷害により一三五日の間に八〇日間実際に通院加療を受けているので、この点の慰謝料としては金八八万五〇〇〇円が相当である。

4  以上の損害賠償額合計は金二九一万六九六六円となるが、既に金一二〇万円の填補を受けているので、残金の一七一万六九六六円を請求できる。

5  原告俊彦が、本件訴訟の提起、追行を原告代理人に委任したことは当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経緯、認容額等の諸事情を考慮すれば、賠償を求めることができる弁護士費用は一五万円と認めるのが相当である。

したがって、原告俊彦の認容額は一八六万六九六六円及びこれに対する同原告が請求している法定の遅延損金となる。

二  原告紀子について

1  治療費等 金一九万六二八〇円(原告紀子の請求どおり)

弁論の全趣旨による(被告もこの点をことさら争っていない。)

2  休業損害 金二四万九八六三円(金四九万九七二六円)

原告紀子は、原告会社から年間四八〇万円の報酬を受けていたとして、実通院日数の三八日分の休業損害が生じたとしてその分の賠償を求めている。

これに対し、被告は、原告俊彦の場合と同様の主張をしている。

原告紀子が、平成八年に年間合計四八〇万円の役員報酬を得ていたこと(甲第八号証の一)、本件事故の傷害の治療のため実通院日数三八日を要したこと(甲第六号証)は認められるが、一方、原告紀子は原告の株主である(甲第一四号証)から、原告紀子の報酬には、株主に対する配当的な部分が含まれているものと推認される。

原告会社の資本規模、従業員数、売上高、事業内容、原告紀子の実際の担当事務(原告俊彦を補佐しての営業や会計等の内部事務処理等)等(甲第一四、第二二、第二三号証等)を総合すれば、原告紀子の報酬中五割が労務提供の対価部分であったと認めるのが相当である。

したがって、実際に通院した日は原告紀子が労務の提供ができなかったものと考えられるから、原告紀子の休業損害は、同原告の請求する金額に五割を乗じたものであり、金二四万九八六三円となる。

3  慰謝料 金七四万円(原告紀子の請求どおり)

原告紀子は、前記の傷害により一〇五日の間に三八日間実際に通院加療を受けているので、この点の慰謝料としては金七四万円が相当である。

4  以上の損害賠償額合計は金一一八万六一四三円となるが、既に金七二万〇八〇〇円の填補を受けているので、残金の四六万五三四三円を請求できる。

5  原告紀子が、本件訴訟の提起、追行を原告代理人に委任したことは当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経緯、認容額等の諸事情を考慮すれば、賠償を求めることができる弁護士費用は五万円と認めるのが相当である。

したがって、原告紀子の認容額は五一万五三四三円及びこれに対する同原告が請求している法定の遅延損害金である。

三  原告会社について

前述のとおり、原告会社所有の被害車両については、既に修理代及び代車代は合意の上支払いがなされているが、原告会社は、修理してもなお、五〇万三〇〇〇円の評価損が発生しているとしてその賠償を求めているが、被告は、本件のような車両については評価損は発生しないとしてこれを争っている。

被害車両は、平成六年三月に初度登録を経たメルセデス・ベンツE三二〇で、既に約四万八〇〇〇キロメートルを走行していたもの(甲第一二号証の一ないし五)であり、前述のように本件修理代は約一六六万円であって、被害車両の基本価格は修理後で三〇〇万円とされている(甲第一二号証の四)などの諸事情に鑑みれば、原告が主張する五〇万三〇〇〇円の評価損を認めることは困難であり、評価損としては、修理代の約一割に該当する一七万円と認めるのが相当である。

原告会社が、本件訴訟の提起、追行を原告代理人に委任したことは当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経緯、認容額等の諸事情を考慮すれば、賠償を求めることができる弁護士費用は二万円と認めるのが相当である。

したがって、原告会社の認容額は一九万円及びこれに対する同原告が請求している法定の遅延損害金である。

四  結論

以上により、原告らの請求は、前判示の限度で理由があり、その余の部分は理由がない。

訴訟費用については、民事訴訟法六四条、六五条により、主文のとおり定める。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 村山浩昭)

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